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しあわせの種10月

 春、生き物の新しい芽吹きを祝福するかのように咲いた花は、季節の巡りの中で、赤や黄色の甘い実を結び、鳥たちは歓びの歌声を上げています。 その果実の中心には、新しい命の種があり、新天地での芽吹きに胸をおどらせていることでしょう。 花のいのちは儚いといわれますが、花弁は散っても目に見えない美しい営みがその後に展開され、秋の実りへと結実してゆきます。  花のいのちは儚いのではなく、姿を変え目に見えない美しさと、智慧でいのちを展開しているのですね。周りのものに歓びと調和を運びながら。

東洋医学では「氣・血・水」の概念があり、氣は目に見えないエネルギーのようなもので、全ての根源であり、また物質に力を与え動かすものとして捉えられています。私たちはこの氣を呼吸から、また食べ物のエッセンスから取り入れています。

   血は食べものから作られ大雑把に云えば、赤血球、白血球、血小板の血液細胞からできています。
*赤血球は酸素を身体全体に運ぶ役割。酸素が身体の隅々まで運ばれて、食べ物からの栄養をエネルギーに変えることが出来るのです。

*白血球は好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球の種類からできていて、病原菌や異物から身体を守る免疫に関する役割

*血小板は血を止める役割

 ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶佑先生の研究は、リンパ球のT細胞の表面にある「PD-1」というレセプター。(コンセントとイメージしてください)。免疫を調節するレセプターです。私たちの身体の免疫システムはとても精巧で幾重にも色々なシステムが絡み合って身体を守っています。

  分かりやすくお話すれば、中世のお城をイメージ下さい。お城の周りには川が流れ、幾重にも高い塀が張り巡らされ、門には見張りの兵隊さんが銃を持って見張りをしています。敷地の中には城を守るために色々な仕事を行う建物があります。城を守るこれらの構造や働きが、私たちの体では、白血球の免疫細胞なのです。免疫細胞は、細菌やウイルスや身体の中の異物を敵とみなし、様々な攻撃を加えます。しかし敵をやっつけるのに余りに血気盛んになり過ぎるとブレーキが利かなくなり、必要以上の労力を使います。すると自らにも害が被ります。


私たちの身体は非常に素晴らしく出来ていて、そうならないようにブレーキの役割を持つ本庶佑先生が発見された「PD-1」レセプターをもっているわけです。免疫細胞には、アクセルとブレーキの作用があるのです。ところが敵の癌細胞もしめたもので負けじと策略を練り、このブレーキのレセプター(コンセント)に入るプラグPD-Ⅼ1とPD-L2を作り入れるのです。そうすれば、免疫に抑制がかかり攻撃されないからです。まるでスリルとサスペンスの映画を見ているような展開が私たちの体の中で繰り広げられているのです。オプジーボは癌細胞よりPD-1と結合する力が強く癌細胞のPD-L1、PD-L2が入れずブレーキがかからないようになり、免疫が高まることで癌細胞をやっつけるという作用機序になります。抗癌剤のように正常細胞を傷つける事無く、癌細胞のみに働くので、非常に画期的なお薬として注目され期待されています。これからの癌治療は免疫療法に脚光があたり、世界の製薬会社がしのぎを削っています。

このように云いますと夢の薬のように聞こえ、全ての癌が消えるように錯覚しますが、先ほどお城で説明しましたように私たちの身体の免疫は、1つで制御されているのではなく、多種多様の免疫細胞が絡み合って調和しながら身体を守っています。進行性期非小細胞肺がん患者のオプジーボ投与の3年生存率18%、5年生存率16%なのです。PD-1の部位だけに作用するので免疫のアンバランスの可能性と耐性の可能性が出て来きます。

西洋医学の免疫療法は画期的な療法だと思いますが、東洋医学的に見れば「木を見て森を見ず」の感が拭えません。そこで是非、木も森を見た予防・治療を同時になさいませんか?体全体の免疫療法をも取り入れれば最強です。

Sally日記