インフォメーション

しあわせの種 2月

胎児の心音のように春の鼓動が聴こえる。
かすかな音だが波のように私の胸に大きく押し寄せてくる。
耳を澄ませば光が波のように流れている。何かを生み出そうとする大きなおおきな力だ。
特に今年はこの力を大きく感じる。世界が大きく変わるのだろうか?
高浜虚子の『下萌の大磐石をもたげたる』(早春のわずかな草の芽吹きが巨大な巌を持ち上げる)が浮かぶ。

霜で凍え枯れてしまったかと思っていた枯草を抜こうとすると、枯草の奥の新芽にハッとさせられた。
植物は冬の間に精気をぎゅっと凝縮させ、春の光に目覚め萌え出している下萌えの季節。
心も身体も寒さにかじかんでいる場合ではない。春の光を感じ背筋を伸ばし進もう。
今まさに星野立子『下萌えぬ人間それに従ひぬ』の心境だ。

星野立子は高浜虚子の次女であり,虚子はこの歌について以下の寄稿をしており、私の自然観そのものなのでご紹介します。

「天地の運行に従って百草は下萌をし、生い立ち、花をつけ、実を結び、枯れる。
人もまた天地の運行に従いて、生まれ、生長し、老い、死する………….(中略)
私は八十年の月日を多くの人と共に暮らして来たが、また多くの山川草木と共に暮らして着た。
私は人の生活にも多少心を止めて来たが、春夏秋冬の移り変わり、花の開花にも心をとめて来た。
そうして人間の生滅も、花の開落にも心をとめて来た。
そうして人間の生滅も、花の開花と同じく宇宙の現象としてこれを眺めつつある。……(中略) 
大も無限であれば、小も無限である。一握りの土の中にも幾億万の微生物の世界がある。
いわん眼前に展開されている禽獣虫魚の世界環は偉大である。
其処に常に種々の変化は嵐の如く起こり、雲の如く過ぎ去ってゆく。

幾十億年の季節が廻り幾十億回目の春である。同じ春は一度もなく移り変わっている。
何がこの変化を生みだしているのだろう。
力強い春の鼓動はどこからきているのだろう?
確かに春の鼓動を感じる何かが私の中にある。小さき私の中にある無限それは何と繋がっているのだろう。

『下萌の大磐石をもたげたる』(早春のわずかな草の芽吹きが巨大な巌を持ち上げる)
小さき中の無限の力だそう!!

Sally日記